手元供養について
手元供養とは、一般的な葬送の形である寺院や霊園への納骨の代わりに、遺骨や遺品を自宅で保管し、自身の手元で供養をする新しい供養の方法で、自宅供養とも呼ばれています。常に故人を身近に感じることができるのはもちろん、お墓参りを必要としないため、距離や時間を気にすることなく供養ができる方法として近年注目を集めています。
比較的新しい供養の考え方ですが、この概念が生まれた背景には大きく3つの理由があると言われています。一つが価値観の多様化。宗教的供養を望まなかったり、それらに対して大きなこだわりを持つ人が減り、もっと効率的で、故人を尊重するような供養の方法が求められるようになりました。そうした中で、故人の生きた証を残したいという要望が増え、手元供養という概念が浸透していったのです。
また少子高齢化や不景気などの社会的背景も理由の一つです。お墓を新しく建てるのは非常に高額な出費であり、少なからず家計の負担になってしまうことは間違いありません。高齢者であればお墓参りへの不安もあるはずです。そうした負担を減らしつつ、気持ちの面での供養もしっかり行えるという点が、支持を集めている理由になるでしょう。
さらに故人とのつながりが強ければ強いほど、残された遺族の心のダメージは大きくなります。それを克服するためにも、身近に故人を感じることができる手元供養が選ばれているのです。
手元供養の方法・仕方
手元供養には大きく分けて二つの方法があります。一つが遺骨や骨壺を自宅に置き、それを供養の対象とする方法。骨壺は遺骨の量によってさまざまな大きさを選択でき、サイズやデザイン、材質なども多く販売されているので、より故人のイメージにあったものを自由に選ぶことができるでしょう。
もう一つが、アクセサリーなどに加工をし、普段から身につけることで供養をして行く方法です。カプセルなどの小さな容器に遺骨を入れ、それをペンダントやブレスレットとして付けるものや、遺骨と宝石を溶かして世界に一つだけの人工宝石を作ったりすることも可能です。
加えて、位牌や置物、お守りといったアイテムで供養をする方法などもありますが、そもそも宗教的な概念に囚われない、自由な発想で故人への気持ちを表す供養ですから、ここで紹介した以外でも、自分なりに最も気持ちを込められる方法を選択すれば良いでしょう。
手元供養するときの分骨方法
手元供養をする際は、お墓に埋葬されている遺骨を一度取り出して分骨する方法と、葬儀の際に火葬場で分骨してもらう方法の2種類があります。
お墓の遺骨から分骨する場合、お墓を埋葬している墓地の管理者から分骨証明書を発行してもらうようにしましょう。その上で墓石を動かし、遺骨を取り出すのですが、自身で動かすことが困難な場合は石材店などに作業を依頼することもできます。
葬儀の際に火葬場で分骨する場合は火葬場の窓口で分骨証明書を発行してもらい、その場で遺骨を納める形で対応することができます。
遺骨を分けて保管することについて、故人が成仏できなくなるのではと心配される方もいますが、仏教では昔から「分骨」という形で宗派の大本山へ遺骨を納めることが一般的に行われており、宗教的な背景から鑑みても問題ないと言えるでしょう。
色々ある手元供養品
手元供養品の代表的なものはミニ骨壺です。デザインや材質、大きさなども自由に選択できるため、故人の人柄や自宅の雰囲気にあったものを選ぶことができるでしょう。
もう一つ代表的なものがアクセサリーです。リングやペンダント、ブレスレットやブローチなど、さまざまなタイプのアクセサリーに対応していますので、好みに応じて選べます。
また変わった例で言えば、手のひらで覆いこめるほどに小さいお地蔵様や、石の置物等があります。こうしたものであれば、お墓や仏像の代わりに手を合わせて供養するのもしやすいかもしれませんね。
他にも、お線香やおりんを置いてちょっとした仏壇代わりに使えるステージといった商品もあります。
手元供養の費用について
骨壷や納骨型のアクセサリーの場合は、2万円~5万円程度のものがメインの価格帯となっています。
装飾が凝ったプレートや、ダイヤモンドなどの宝石に加工する場合は10万円程度が相場となるでしょう。宝石にする場合は、そのサイズが大きければ大きいほど金額も上がります。
手元供養の場合は墓地を買う必要がありませんので、実質必要となる費用は手元供養品に対してのみと考えておいて問題ないでしょう。ただし、寺院に供養や法要をお願いしたり、分骨の作業を業者に依頼したりする際は別途料金が必要になります。
まとめ
手元供養の一番の魅力は、故人を身近に感じながら、自身の気持ちに則った供養ができるということでしょう。死生観や宗教観もさまざまに変化をする中で、形式よりも想いや気持ちを大切にしたいという考え方は、これからのスタンダードになっていくかもしれません。
費用や距離的な負担を減らすことができるという実質的なメリットも大きく、今後ますます拡大していくことが予想されます。しかし、現時点ではまだまだ新しい供養の考え方ではありますので、親族や家族の理解をしっかりと得た上で、検討を進めるようにしてください。