2018.11.20寺で作られる酒や食品「寺フード」への関心!?

恩送りで設置している、仏教フリーマガジン「わげんせ」編集長の和栗由美子さんの記事が出ていましたので、ご紹介致します。


パワースポット巡り、御朱印集めなどが人気の中、雑誌で寺で作られる酒や食品「寺フード」を特集したところ反響が大きかったという。注目を集める背景について解説してもらう。

近年では寺に泊まる宿坊体験など、非日常的な体験に癒やしを求める「女子旅」もブームになっている。その結果、旅先、つまり寺周辺の店のおいしいスイーツなどにも注目が集まりつつある。

 最近では、そこから一歩進んで、寺で作られる酒や食品「寺フード」を、仏女が牽引(けんいん)する形で、広く知られるようになってきているのだ。

 

 


寺フードとは?

 大善寺(山梨県甲州市)は、ブドウ栽培が盛んな地区にあり、ブドウを手にした薬師如来を祀(まつ)ることなどから「ぶどう寺」と呼ばれている。境内では17種のブドウを栽培し、裏参道にある醸造所でワインも造られており、境内で飲むことができる。

※大善寺で売られているワイン(わげんせ編集部提供)

2016年に放送された人気ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のロケ地となり、出演者が境内を散策したりワインを楽しんだりするシーンの舞台となったことから、放送後には参拝者が急増した。「寺が造ったワインを飲む」体験が珍しく、「寺フード」への認知度も急速に高まった。


寺フードの魅力

 「寺フード」は、単に珍しさやSNS映えだけが人気の背景にあるのではない。もちろん他のグルメとは違い、味のおいしさだけを求めるものではなく、由来があることがポイントだ。

大善寺のワインも、住職の酔狂で始めたわけではなく、歴史の裏付けがある。ブドウは、奈良時代に中国の僧侶が仏教とともに日本に伝えたもので、その伝わった地が大善寺だったのである。ブドウは当時、薬と考えられており、寺は診療施設としても重要な役割を担っていたと言える。昔、寺が最先端の文化発信地であったからこそ、その伝統を守り広めることができたのだろう。

酒以外の寺フードをみても、同様のことが言える。「宗鏡寺(すきょうじ)」(兵庫県豊岡市)は1616年に沢庵和尚によって再興された寺で、「たくあん漬(づけ)」の発祥地。寺でしか買えない「沢庵寺のたくあん漬」(税込み600円)が人気だ。


※宗鏡寺の「沢庵寺のたくあん漬」(わげんせ編集部提供)

寺には、沢庵和尚が、庶民が大変な思いをして育てた食べ物の大切さを教えるため、寺を訪れた徳川家光に質素な大根のぬか漬を振る舞い、おいしさに感動した家光が「たくあん漬」と名づけたという逸話が伝わる。

約10年前に近隣の子どもたちが沢庵和尚の逸話を知らなかったことから、後世に残そうと、子どもたちとたくあん作りを始め、寺で販売し、当時、台風で大きな被害を受けた寺の復興資金に充てた。


胃も心も癒やしを求める

 仏女はブームになったが、もともと仏教や寺が好きというわけではなく、「仏像」を愛(め)でて「珍しい!」「カッコイイ!」「顔がイケメンだ!」と感じたことが関心を持つきっかけになっている。きっかけはミーハーであっても、「もっと楽しむにはどうしたらよいか」と研究するようになり、仏像が安置されている寺や、そこでのしきたりにも興味を持つようになった。だから、仏女に「好きな仏像」を聞いても由緒のあるものが多い。

忙しい日常では、空腹を満たすだけのために、コンビニエンスストアやファストフードで買った食品を「いただきます」もなしに、食べてしまうことが多い。こうした高カロリーな食事とは違い、「寺フード」はカロリーが低く、体にも良いものが多い。女子に関心の高い「ダイエット」や「健康」などの欲求も満たしてくれる。胃腸にもやさしい。

それだけではない。仏教では食事を通して「命」を無駄なく大切にいただくことを学ぶ。こうした教えや先人の知恵、由緒に触れることで、人は心が洗われるような気持ちになり、癒やしにつながる。人が「寺フード」を求めるのは、日常に疲れ、癒やしを求めた結果なのではないだろうか。

時代は変わっても、寺が人々の心のよりどころになっているのは今も変わらないようである。読売新聞(ヨミウリオンライン)

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