2018.09.25住職こだわりのコーヒー! 一龍院「カフェ寺’s」
成城学園前駅と仙川駅の間に位置する「カフェ寺’s(テラズ)」は、お坊さんが運営している コーヒー専門店。本堂である一龍院に併設された空間で、美味しいコーヒーをゆったりといただけるこだわりのお店です。
オーナーの小田浩良(こうりょう)住職は、恩送りの活動にも参加されています。今回は、 コーヒーへのこだわりやこれからのお寺のあり方などについて、小田住職にじっくりとお話を伺いました。
こだわりのコーヒーで心を豊かに
「上質なコーヒーと身体にやさしいお食事で、心身ともに豊かになっていただきたい。光と影をコンセプトにしたカフェで、リラックスしながらゆったりとくつろいでいただきたいと願っています」
――「カフェ寺’s」を始めたきっかけを教えてください。
元々コーヒーが好きで、色々な喫茶店を回るのが趣味でした。しかしある時、とても美味しいコーヒーを出してくれるお気に入りの喫茶店が閉店してしまったんです。そこで、いっそのこと自分で美味しいコーヒーを作ってしまおうと決意しました。
また、お寺はもっと変わっていくべきだという考えをずっと持っていました。日本には、7万7千以上ものお寺があります。これはコンビニの数よりも多いのです。しかし、少子高齢化が進んでいることもあり、これから数十年後にはお寺の数が半減すると予想しています。そのような中で、人々に選ばれるお寺になるためには、何か一つ主張する個性がなければいけないと考えました。そういった意味でも、カフェは最適だと考えました。
――カフェのこだわりを教えてください。
私と科学的にコーヒーを勉強したマスターで、こだわりのコーヒーを提供しています。コー ヒー豆はグレードが高く質の良いものを選び、風味が豊かになるよう焙煎にかける日数も調整します。コーヒーは、季節によって美味しくなる焼き目が異なるんですよ。その日の気温や湿度も考慮して、一番美味しくなるよう毎日深夜まで準備しています。
コーヒーだけでなく、フードメニューも豊富に用意しています。湯葉かけ丼やロコモコカレーなど、素材にこだわった身体にやさしい料理をお楽しみいただけます。皆様には、美味しいものを食べて身も心も豊かになっていただけると嬉しいですね。
――どのようなお客様がいらっしゃいますか?
若い方から子ども連れの方、ご高齢の方まで幅広く来店いただいています。中でも多く来ていただいているのが、ミドルエイジ層の方です。人通りが多い場所なので、常連さんだけでなく何も知らずに来店される方も多いです。そういう方は、お店に置いてある仏像を見てびっくりされることもありますね。
――お客様とはどのような関係を築いていますか?
お寺が運営するカフェでよくある、法話や相談会のようなことはしておりません。このお店では、言葉でのコミュニケーション以上に、何かを感じ取っていただくことを大切にしています。もちろん、お客様が望まれる場合はじっくりとお話させていただきます。
内装の表現にもこだわっています。光と影をコンセプトに、白と黒のコントラストを用いたり、ライトの位置を調整したりしています。この空間で、人間も光が強いほど闇が深くなるということや、物事のバランスの大切さを感じ取っていただけると嬉しいですね。
スピーディに!柔軟に!チャレンジする姿勢
「これからのお寺に求められることは、社会の変化に応じて柔軟に対応していく姿勢。恩送りの活動を通して、新しい試みに積極的にチャレンジしていきたいです」
――恩送りの活動に参加したいと思われた理由を教えてください。
恩送りでは、普通のお寺ではできないアグレッシブな活動を、スピーディにされている点に魅力を感じました。これからのお寺は、社会の変化にもっと柔軟に対応していく必要があると感じています。その点で、恩送りの活動にとても共感できたんです。
しかしながら、「新しい試み」はトライ&エラーの繰り返しです。私自身、多くのトライ& エラーを重ね、“経験”としてきました。その培ってきた経験が、この恩送りの活動の中でも必ず活かせると思っています。常にチャレンジする姿勢は忘れずにいたいですね。
――目指す住職像を教えてください。
笑って座っているだけで、すべて理解してもらえる住職を目指しています。対話せずとも、そのいで立ちだけで相手に大切なことを伝えられるような姿ですね。本来、力があるものに言葉は必要ないんですよ。雄大な富士山も、言葉がなくともその力、圧倒的なパワーを感じ取れますよね。住職の究極の姿も、それと同じなのだと思っています。カフェ寺’sでも、何気ない一杯のコーヒーから何かを感じ取っていただけることを目指しています。
カフェ寺’sさんのコーヒーは、香り立ち奥行きの ある風味で心も身体も癒されました。小田住職も、お茶目で気さくなお人柄の中にハッとさせられる強い信念が感じられ、話せば話すほど魅了されてしまいました。
そして、これからの時代に対応するために、カフェという形でお寺と人をつなぐというあり方はとても新鮮に映りました。美味しいコーヒーはもちろん、不思議で斬新な雰囲気を楽しんでいただけるカフェ寺’sさん。皆さんもぜひ足を運んでみませんか?
(取材部:岡田)
修弘山 一龍院
東京都調布市入間町1-38-1
03-3308-4440