2019.03.04介護をきっかけに、地域に寄り添うお寺を目指して/慈慧院・飯塚住職

東京都板橋区にある慈慧院の飯塚継真住職。認知症を患った父親の介護を通して、地域の人々とのつながりの重要性を実感したと語ります。誰もが安心して集える、地域に寄り添うお寺を目指して活動する飯塚住職に、介護から見えた世界や今後の目標についてお話を伺いました。

 

たくさんの人の支援があるから、介護ができる

「介護ではケアマネージャーさんや地域の皆さんにたくさん助けられました。今度は、私が地域の皆さんに恩返しをする番です」

 

―お父様の介護を経験されたと伺いました。

 

先代の住職だった父が認知症を患い、介護をするようになりました。早くに亡くなった母が長期入院していた時、父が献身的に母の介護をしているのを見ていたので、父のことは最期まで面倒を見てあげたいと考えていたんです。介護生活は3年以上続きましたが、2018年に認知症では最高レベルの要介護3の認定を受けたので、介護施設に入居することになりました。

 

―介護で大変なことは何ですか?

 

認知症の症状は、あるタイミングでぐっと進行する傾向があります。そうなった時、どう対応すればいいのか分からず戸惑いました。また、コミュニケーションがとりづらいのも大変です。あくまで本人は真剣なのですが、正しいことを言っても違う答えが返ってくると、どうしても腹が立ってしまうこともあり…。子どもの頃からの父親像とのギャップも大きく、親しい家族だからこそ難しい点も多いと思います。

 

 

―介護を通して気づいたことはありましたか。

 

たくさんの人の支援があってこそ、介護は成り立つものだなと。家族だけで介護はやっていけないものです。ケアマネージャーの宮脇さんには、ケアプランを立ててもらうなどきめ細やかなサポートをいただきました。また、父が自転車で徘徊してしまった時は、地域の人たちに何度も助けられました。

父はずっと地域のラジオ体操に参加していたのですが、介護施設に入居することが決まった際、ラジオ体操仲間から寄せ書きをもらったんです。それを見た時、地域の人のあたたかさを実感し、思わず目頭が熱くなってしまいました。そして、皆がいたからここまで介護ができたんだと改めて思いました。父は地域の人たちのお世話になりました。だから、私も地域の人たちに恩返ししたいと心から願うようになりました。

 

―お寺として今後取り組みたいことはありますか?

 

お寺は仏事をするところですが、それだけが役割ではありません。文化的な交流の場(認知症カフェ、カラオケ教室など)をお寺で開き、お年寄りや地域の方々が気軽に安心して集える場所にできればと考えています。認知症は、居心地のいい環境があれば症状の進行を遅らせることができます。お寺が皆の大切な居場所になれば、素敵ですよね。

先日、「認知症サポーター(※)」という講座を受講しました。親や親族が認知症になっても、だれに相談したらいいか分からない、そもそも認知症の症状なのかを判断できない方は大勢いらっしゃいます。私自身の介護経験や講座で学んだ知識を活かし、そのような方々や地域の人々を支援していきたいです。

また、仏事やお墓についてよく分からないという人は多いものです。そしてここに、お寺という場所があって、私を頼ってくださる方々が目の前にいる。だからこそ、不安を抱える皆さんに寄り添い、お役に立ちたいと思っています。

 

※認知症サポーター
認知症に対する正しい知識と理解を持ち、地域で認知症の人やその家族に対してできる範囲で手助けする支援者。全国の自治体で「認知症サポーター養成講座」を実施中。

 

 

―恩送りに期待されることを教えてください。

 

「できたらといいな」「やってみたいな」と思うことは、すぐにでも行動に移すべきだと考えています。でも、一人の力だけではどうしても規模が小さくなってしまうので、協力者や同じ思いを抱く人とのつながりが重要になります。恩送りは、目指すものや志を同じくする人がたくさん集っているので、希望を実現する上で大変心強い味方になってくれると思います。恩送りの社会活動に協力し、2019年内にはお寺を改修して「皆が安心して集える場所」にしたいですね。

 

 

ビジネスマンや事業家といった経歴を経て、僧侶になった飯塚住職。力強くまっすぐな瞳からは、介護や多様な人生経験からくる懐の深さが感じられました。地域の人々とのあたたかいつながりは、これからの社会にとって不可欠なものになるでしょう。恩送りは、今後も社会貢献に取り組む人々や団体を支援し、メンバーや皆さまの協力を得ながら成長していきたいと思います。

 

今回取材したお寺はこちら!

慈惠院

東京都板橋区熊野町34−15

03-3974-1916