殺処分ゼロの活動・ペットの里親支援
お坊さんが作った社団法人「恩送り」では、ペットの里親支援と殺処分ゼロの活動に取り組んでいます。
そのきっかけは、法要でお参りに行った際に里親の現状を知ったことでした。里親に出される犬や猫をはじめとするペットたちは、以前の飼い主のもとで虐待を受けており、衰弱して短命であるという事実。複数のペットたちを受け入れた里親は、その供養の経済的負担にお困りであるということが分かりました。また、現状の里親活動はペットと里親をマッチングさせることに重きをおいており、アフターフォローまで手が回っていないという現状を知りました。
この現状はどうにかしなければならないと思い、里親活動について詳しい僧侶たちと議論を重ね、ペットの里親活動を支援することにしたのです。お寺で保護ペットと里親の出会いの場を提供し、殺処分ゼロに向けて取り組むとともに、信頼できる葬儀社と連携し、ペットの供養というアフターフォローまで実現。里親とペットがともに幸せになっていただけるよう、私たちが少しでもお力になれればと考えております。
また、人間とペットが一緒に入れるお墓の設立も目指しています。仏教では、生きとし生けるものは全て平等という思想であるにも関わらず、霊界では厳格に分離することが求められていました。しかし、今は時代が変わっております。ペットは家族の一員として捉えられ、死後も一緒に過ごしたいと願う人が増えてきました。そのため、ペットとともにお入りいただける合同供養墓をご用意し、ペットとご家族をご供養いただける環境を作りたいと願っております。
今後も里親支援をはじめ、ペットにまつわるさまざまな活動に取り組んでまいりますので、どうぞご期待ください。
殺処分の実態
8.2万頭。この数字が何を表しているかご存知でしょうか。実は、年間における殺処分されたペットの数です。環境省の発表によると、2015年度には犬が1.6万頭、猫が6.7万頭殺処分されてしまっており、1日あたり225頭の犬と猫の命が失われているということになります。これは、何とも心痛ましい事態です。しかし、まだまだその数は多いものの、過去10年間と比べると3分の1以下にまで減少しています。
この背景は、行政と民間団体の努力によるものと言えます。2012年に動物愛護法が改正されたことを受け、保健所では「可愛くなくなったから」「引っ越しで飼えなくなったから」といった安易な理由での引き取りの申し出を拒否するようになりました。その結果、2005年度の保健所の引き取り数が39.2万頭であったのに対し、2015年度は13.7万頭にまで減少しています。また、民間団体がペット保護の引き取り手となり、里親活動に取り組むことで殺処分率を大きく引き下げることができています。依然として高い数字ではありますが、みんなの努力によって徐々に改善されてきていると言えるでしょう。
ペットの殺処分はどのように行われているのでしょうか。つらいお話をさせていただきますが、各都道府県の動物愛護センターおよび保健所で、できる限り苦痛を与えないよう、炭酸ガスによる窒息死や注射による安楽殺という手段がとられています。保護されたペットは原則として3日以内に飼い主から返還要求がされない限り、殺処分されてしまうのです。
殺処分の犠牲となってしまう動物たちが後を絶たない理由は、ペットの大量販売と無責任な飼い主にあると言えます。気軽にペットを購入できることから、飼育の大変さを理解せず飼いはじめ、「言うことを聞かないから」「飼育にお金がかかるから」「たくさん子犬・子猫が生まれてしまったから」と、いとも簡単にペットを捨ててしまう人が存在するのが実情です。
この状況を改善するためには、一人ひとりが意識を変えて、最後まで責任をもってペットを飼育してあげることが何よりも重要になるでしょう。そして、目の前の犠牲をできる限り減らすためには、民間団体の里親活動が大きな役割を担うことになるのです。
各団体の活動事例
殺処分ゼロを目指すため、各団体ではさまざまな取り組みを実施しています。
まず、神奈川県では2013年度犬の殺処分ゼロを達成しました。動物引き取り手数料を2,000円から4,000円に改定し、飼い主が分からない犬の写真や情報をさまざまなホームページに掲載。ボランティアと協働し、里親への譲渡を推進しました。年齢や病気、攻撃的な性格といった理由から引き取り手が見つかりづらい犬も、ボランティアが積極的に引き受けることで、殺処分ゼロ達成の大きな推進力となりました。
兵庫県尼崎市では、2012年より動物愛護管理施策のための寄付金やふるさと納税を受けつけています。支援を受けたお金で野良猫の避妊手術費用の助成金を拡充したり、譲渡を促進するため保健所に収容されているペットのトリミング費用にあてたりと、地道な活動を行っています。人と動物が幸せに暮らせる社会を実現するためには、多くの人からの協力が重要になると言えるでしょう。
次は、民間団体の事例をご紹介しましょう。株式会社シロップは、保護されたペットと里親を結びつける「OMUSUBI(お結び)」というマッチングサービスを提供しています。安心、納得した上でのマッチングを促し、保護団体の譲渡活動にかかるコストを削減するといった付加価値も期待できます。
NPO法人ピースウィンズ・ジャパンでは、捨て犬や迷い犬を保護・譲渡し、保護した犬を災害救助犬やセラピー犬に育成する活動にも取り組んでいます。
NPO法人東京キャットガーディアンは、賃貸マンションに猫がついてくる「猫付きマンション」の運営や、キャットフードなどを購入することで保護活動に参加できる「ShippoTV」の運営など、さまざまな活動を通して里親活動を支援しています。
そして、私たち「一般社団法人 恩送り」では、保護ペットと里親の出会いの場としてお寺を活用し、亡くなってしまったペットの供養で里親活動を支援しています。命あるものを大切にするというのは、お寺の本来もつ役目です。今後もさまざまな活動に取り組んでいく予定です。
これからの課題
日本全国にてペットの殺処分ゼロを達成するためには、保健所に引き取られるペットの数を減らすことと、引き取られたペットを殺処分せず譲渡していくことが重要になります。
保健所に引き取られるペットの数は、ペットの飼育に対して無責任な飼い主の数に比例します。一人ひとりが意識を変えるのはもちろんのこと、行政と民間団体が協力しあい、責任をもって飼育できる人だけがペットを飼い始められる環境を作り上げることも必要になるでしょう。また、ペットが迷子になってしまい保健所に引き取られることを防ぐためにも、マイクロチップなどで居場所を探索できる状態にするのも有効です。
そして、ペットが殺処分されてしまう前に里親とマッチングする機会を設けて、積極的に譲渡していく必要があります。その際、新たな里親のもとで同じような問題を繰り返してしまわないためにも、保護ペットに対して手厚くしつけやケアを行い、健全な状態で引き渡すことが求められます。
日本の大きな社会問題の一つであるペットの殺処分問題を解決するために、恩送りも仏教という立場から貢献していきたいと願っております。
恩送りでは、支援活動に協賛いただける僧侶・同士の方を募集しております。一般会員でしたら、年会費1,000円でご入会いただけます。預かった会費はすべて、ペットの里親支援や子ども支援などの社会慈善活動に活用し、支援を必要とされる方々へ恩をお届けさせていただきます。恩送りに共感いただける方、活動内容にご興味をお持ちの方は、ぜひ恩送り事務局までお知らせください。皆さまのお力添えを心よりお待ちしております。
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