2018.11.27「依存症に負けない!」もっと理解をひろめたい—-依存症回復支援

現代社会に拡がる様々な依存症
皆さんは『依存症』という言葉をきいて、どんな印象を持ちますか?自分には関係ないと思っていませんか?

「アルコール依存」「ギャンブル依存」「薬物依存」などと聞くと、ちょっと怖い印象ですよね。自分には関係ない話のように感じてしまいそうですが、最近では「ゲーム依存」「スマホ依存」などという現象も見られるようで、こうなるとかなり広い範囲の方にも思い当たる節があるのではないでしょうか?
実はこれら様々な依存症状は、対象がどんなものであろうと依存していく仕組みは同じなのだそうです。最近取り上げられることの多いこの「依存症」の問題。恩送り取材部は、依存症からの回復を支援されている城間 勇氏(日本でのリカバリーパレード実行委員長)にお話を伺いました。

 

 

 

 

 

 

城間 勇(シロマ イサム)氏:RDP横浜施設長(RDデイケアセンター初代施設長)
自身がアルコール依存症から健康を回復した体験をもとに、活動を展開。
お酒を嗜みはじめたのは20代。もともと酒豪の両親をもっていたため、遺伝的にお酒が好きで、多量のお酒を受け付けられる体質でもあった。仕事関係の悩みやストレスを感じ始めた30代から酒量が増える。
40代には完全なアルコール依存の状態になり、7回の入退院を繰り返し心身ともにボロボロになるも、その後長い期間をかけ健康を取り戻し、立ち直る。
現在は、「同じように依存症で苦しむ人々に救命具を差し出すような役割を担いたい」と、良き伴侶である順子氏とともに2人3脚で、日々活動に奔走。

RD(リカバリー・ダイナミクス®)とは?
リカバリー・ダイナミクス®は、主として依存症回復の施設で用いるカリキュラム。
12のステップを順に実践し回復率を上げるプログラムで、現在、アメリカ・カナダだけでなくイギリスをはじめヨーロッパ諸国の施設でも採用され、大きな成果を挙げています。

 

『依存症』ってなんだろう?

城間さんとお会いするのは、9月に新宿で行われたリカバリーパレード~回復の祭典~以来、約2か月ぶり。今回は、依存症に関する知識を深めたいとの思いから、城間氏のご自宅に伺いました。

 

 

 

 

 

 

 

取材部・新田:城間さんに初めてお会いした新宿でのリカバリーパレードでは、多くの参加者をまとめながら、各参加者に対しても細やかな気配りをされている姿が印象的でした。リーダーシップの強さと温かいお人柄が伝わってきましたが、『依存症』との接点はどこにあったのですか?

城間氏:接点というか・・・・私自身が依存症だったんです。驚かれる方も多いんですが、約20年かけてアルコール依存を克服した自分自身の体験があるからこそ、こういった活動をしているのです。

新田:依存症というと、毎日お酒を飲んでいた?

城間氏:症状が最も重い頃は「毎日」というより、「何日もずっと飲み続ける」、という状態でした。『連続飲酒』といって、寝るとき以外はずっと飲んでいる。もう止めたいと思いながらも、自分の意志ではコントロールできない状態に陥っていたのです。止めたいのにやめられないから、しまいには泣きながら飲み続けるんです。

新田:入院は、その依存を絶つためですね?7回の入退院をされているそうですが、やはり1回では回復できないのでしょうか?

城間氏:それが『依存症』の難しいところです。依存症は、実は本人以外の周囲の人間(家族などコミュニティ)にも原因がある場合が多いのです。ですから、本人だけが治療を受けても社会や家庭に帰すと、また元の状態に戻ってしまう。植物と土壌の関係と同じで、健康な木を育てるには、土のコンディションも重要だということです。

新田:依存症の問題は、本人だけの問題ではない?

 

 

 

 

 

 

城間氏:そもそも、家族も本人も依存症であることに気づかない場合が多いのです。もちろん依存症が“病気”であることも知らないのです。また依存症を、本人のだらしなさや意思の弱さが原因と思っている為、“恥”と捉えてしまう。否定し隠してしまうので、誰にも知られないまま本人・家族が共に苦しみ、共依存の状態になり共倒れになる場合があります。

新田:なるほど。病気だという正しい認識と、適切な治療が必要なのですね。

 

独りで悩まず相談して!一人ぼっちではないことを知って欲しい

 

 

 

 

 

 

城間氏:日本では精神科にかかることに抵抗感や偏見を持つ傾向がありますが、依存症もきちんとした治療により回復するのです。≪リカバリーパレード~回復の祭典~≫は、そうした偏見から独りで悩み苦しんでいる方々にも、「ここに仲間がいるよ、きっと回復できるよ」というメッセージを発信するものです。

新田:東京のリカバリーパレードは、来年が10年目ですね。

城間氏:10年という大切な節目として、大きな催しにしたいと思っています。しかし関西や広島などに比べて東京はまだ参加者が少ないので、周知活動にも力を入れたいと思います。

新田:今後の活動の目標は?

城間氏:結局この問題は、患者を受け入れる社会や共に暮らす家族の理解と協力が最大のポイントです。それなしでは真の回復は成しえません。依存症に対する正しい認識をより多くの方々に広めたいと思います。また、関係書籍の翻訳なども引き続き行っていきます。

新田:この活動のやりがいはどんなところですか?

城間氏:自分自身の回復も1つの喜びですが、他の悩める方々が回復していく姿もまた自分の喜び・勇気になります。それを原動力として頑張っています。

 

 

 

 

 

 

お2人で互いに尊敬しあい、協力していらっしゃる城間夫妻の活動に感銘をうけました。氏のおっしゃるとおり、依存症に対する正しい知識がもっと広まることが重要なのだと思いました。この度、恩送りを代表しお話をお伺いしてきましたが、まだまだ知らないことや分からないことばかりです。
今回のご縁をいただいた、理事の斉藤先生(要唱寺住職)と連携しながら、学び・支援を進めていきたいと思います。お忙しい中、取材に快くご協力いただいた城間夫妻に、心より感謝申し上げます。

 

 

 

 

 

 

~今回取材にご協力いただいた方々~
城間 勇氏: RDP横浜施設長
城間順子氏:セレニティハウス(横浜市金沢区) 寮長